施設・装置

我々のグループは他大学にはない3つの巨大装置(電子蓄積リング、線型加速器、ガンマ線ビームライン)を管理運用し、これらを使用した研究を行っています。

 

1.5GeV電子蓄積リング

シンクロトロン放射光はほぼ光速で運動する電子が進行方向に対して垂直方向に加速度を受けた時に電子から放射される強力な電磁波です。ニュースバル電子蓄積リングでは最大エネルギーが1.5GeV(ギガ電子ボルト)の高エネルギー電子ビームを長時間蓄積することが可能であり、電子ビームから放射される軟X線領域のシンクロトロン放射光を用いて、最先端の基礎研究、産業利用、学生教育を行っています。

電子蓄積リングは様々な種類の電磁石群、真空システム、高周波機器、各種ビームモニターおよびこれらの制御システムから構成されます。

国内大学で最大の電子蓄積リング
ニュースバル電子蓄積リング全体図

 

挿入光源

10.8m 長尺アンジュレーター

ニュースバル電子蓄積リングの直線部には偏向電磁石からのシンクロトロン放射に比べて高輝度の放射光をを発生できる挿入光源が3台設置されています。

●長尺アンジュレーター(Long Undulator, LU)
  全長10.8m、周期数200

●短尺アンジュレーター(Short Undulator, SU)
  全長2.8m、周期数40

●自由電子レーザー
  任意テーパーアンジュレーター(2台)
  シケイン電磁石、入射レーザー
  入射レーザー、高精度同期システム
  単一パルス放射光発生に向けた世界初の実証実験
  理化学研究所・兵庫県立大理学研究科との共同研究

 

制御室

ニュースバル制御室

電子蓄積リングおよび線型加速器の運転制御はニュースバル制御室から行います。加速器を構成する多種多様な機器はすべてリモートで監視され、Linux計算機で制御されます。

ニュースバル専用入射器(1.0GeV電子線型加速器)

ニュースバル建設以来20数年に渡って電子ビームを供給していたSPring-8線型加速器が老朽化によりシャットダウンしたため、SPring-8加速器フループの協力を得て2021年にニュースバル専用入射器(線型加速器)を建設しました。

入射器全体構成図

 

電子銃・238MHz空洞・476MHz空洞・Sバンド加速管

Sバンド加速管
電子銃・238MHz空洞・476MHz空洞

電子銃の熱陰極から放出された電子は238MHzと476MHzの高周波加速空洞およびSバンド加速管の電場により加速および集群されます。

 

Cバンド加速管

Cバンド加速管

Sバンド加速管で50MeVまで加速された電子ビームはその下流にある16本のCバンド加速管により最大1.0GeVまで加速されます。

 

ビームダンプ

ビームダンプ

線柄加速器から出射された高エネルギー電子ビームは蓄積リングまたはビームダンプにに入射されます。蓄積リングを運転しない場合は垂直方向偏向電磁石を励磁することによりビーム軌道をビームダンプ方向(下方)に曲げます。電子ビームはダンプで廃棄されます。

光源開発ビームラインBL01

光源開発ビームライン

我々のグループでは2台の加速器に加えて、光源開発ビームラインBL01を運用しています。シンクロトロン放射光施設で発生できる放射光の上限は硬X線までですが、本ビームラインはレーザー光と高エネルギー電子ビームを正面衝突させることで発生するレーザコンプトン散乱(Laser Compton Scattering, LCS)により、エネルギー可変・準単色・高指向性・偏光性を有するガンマ線ビームを発生することができます。このようなLCSガンマ線施設は世界で3箇所しかありません。

BL01全体構成図

 

入射レーザー

入射光子レーザー

遮蔽トンネル外にある光学定盤上に波長の異なる複数のレーザー機器を設置しており、実験に必要なガンマ線エネルギーに応じてレーザーを切り替えます。

レーザー光はミラー、集光レンズ、ビューポートを経由して電子蓄積リングの真空チェンバー内に導かれ、リング直線部で高エネルギー電子ビームと正面衝突することで赤外線から可視光領域の入射光子はガンマ線領域の高エネルギー光子として反跳されます。

 

鉛コリメーター

鉛コリメーター

LCSガンマ線は最大エネルギーから低エネルギー側にスペクトルが広がっています。また高エネルギー加速器内では制動放射などによってもガンマ線は発生します。このためコリメータ(数mmの貫通孔のある鉛ブロック)を使用して、ビーム中心軸近傍の高エネルギー部分だけを通過させる事により、準単色・高指向性のガンマ線ビームを生成します。

 

ガンマ線実験用ハッチ

ガンマ線ハッチ

実験ホールにあるBL01実験ハッチでLCSガンマ線ビームを利用します。ユーザーは実験目的に応じて様々な測定装置をハッチ内で使用できます。

 

LCSガンマ線の優れた特徴1 〜準単色スペクトル・高指向性ビーム〜

ガンマ線スペクトル

LCSガンマ線源の優れた特徴として高い指向性を持つガンマ線ビームであること、また鉛コリメータを用いて光軸近傍の光子を選択的に取り出す事により準単色エネルギーであることです。

 

LCSガンマ線の優れた特徴2 〜エネルギー可変〜

BL01におけるガンマ線エネルギー範囲

LCSガンマ線スペクトルの最大エネルギーは電子エネルギー、レーザー光子エネルギー、およびそれらの衝突角度で決まります。従って、波長の異なるレーザーを使い分ける他に、ニュースバル電子蓄積リングの特徴である電子ビームエネルギー可変性(0.5~1.5GeV)を生かして任意エネルギーガンマ線を発生することが可能です(0.5~76MeV)。BL01ユーザーは実験に必要なピンポイントのエネルギー値のガンマ線を利用できます。

 

LCSガンマ線の優れた特徴3 〜偏光性〜

BL01におけるガンマ線偏光性

偏光とは電磁波の電気ベクトルの方向の時間的変化を表し、直線偏光・円偏光・ランダム偏光があります。LCSガンマ線は入射レーザーと同一の偏光性を有します。ガンマ線の偏光度を制御できることがLCSガンマ線の大きな特徴です。