BL01 光源開発ビームライン

目的
BL01は新光源の開発と利用を目的とした光源開発用ビームラインです。現在、電子蓄積リング内を周回する高エネルギー電子ビームに外部からレーザー光(NdレーザーやCO2レーザー)を導入・衝突させることによりコンプトン散乱ガンマ線(1-40 MeV)を発生しています。このガンマ線は、直線偏光や円偏光での発生が可能で、コリメーターを用いることで、高い偏極率の準単色のガンマ線として発生できます。
従来の線源に無い特徴を持つこのガンマ線ビームを利用するために、専用のガンマ線遮蔽ハッチを設置しており、光核反応研究、対生成陽電子発生と利用、核変換やガンマ線非破壊検査等への応用研究が実施できます。
構成

ビームラインの全体構成は下図の通りです。レーザーは現在Nd:YVO4(波長1μm、0.5μm)とCO2(波長10.6μm)レーザーの2種類です。図BL01-(2)のA点(Ndレーザー)及びB点(CO2レーザー)で電子ビームと衝突させガンマ線を発生します。生成したガンマ線ビームの利用は遮蔽ハッチ内で行ないます。測定器としてはNaIシンチレーション検出器、Ge半導体検出器、中性子シンチレーター、イメージングプレートなどがあります。データ収集には、線形アンプ(Linear Amp)、計数器(Counter, Rate Meter)、多重波高分析器(MCA)等を使用できます。

レーザー | |
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Nd:YVO4レーザー | 波長 1.064μm, 5W : CW-100kHz (Pulse width 8ns) 波長 0.532μm, 4W : 10kHz-100kHz (Pulse width 8ns) |
CO2レーザー | 波長 10.52-10.57μm, 20W |
He-Neレーザー | アライメント用 |
Ti-Safレーザー | 準備中 |
ミラー・分光器仕様
ミラー仕様
BL01にはレーザー導入用、或いは放射光観察用の銀コートミラーが真空ビームライン内に設置されています。ガンマ線ビームはこれらミラーおよび真空窓を通過して、電子ビーム進行方向直線上に引き出され、大気中で利用できます。
ガンマ線コリメーター仕様
コンプトン散乱ガンマ線の光子エネルギーは散乱角度に依存して変化するため、コリメーターで中央部分を取り出すことにより、準単色のガンマ線を利用することが出来ます。10cm厚さの鉛にもうけた、直径6mmおよび直径3mmのコリメーターが利用できます。コリメーターはX-Yオートステージ上に設置しており、微調アライメントが可能です。
分光器仕様
ガンマ線光子分光は、Ge検出器等と多重波高分析器の組み合わせで計測できます。高エネルギーガンマ線では、検出器の応答関数を用いたシミュレーションを援用する必要があります。
エンドステーション
ガンマ線利用のためのシールドハッチが設置されています。図BL01-(3)に側面図と写真を下に示します。電子エネルギー1GeV運転(電子電流 250-mA)のとき、Ndレーザー(波長1μm、出力4W)を入射すると、6~17-MeVのガンマ線が6x106 光子/secのフラックスで発生します。コリメータを用いない場合、電子との衝突点から約19m位置にあるガンマ線ハッチ内では、ガンマ線ビーム半径は10mm程度となります。ハッチ内にガンマ線照射ターゲット等を設置して、遮蔽ハッチ扉を閉鎖した状態で照射実験を行ないます。
スペクトル
Ndレーザー(波長1.064μm)を用いた場合のガンマ線スペクトル BL01-(4)と
ガンマ線エネルギーの角度分布 BL01-(5)


照射可能なガンマ線フラックス
Laser | wavelength | Gamma photon energy* | Normalized Flux |
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レーザー | 波長 | ガンマ線光子エネルギー* | 規格化フラックス |
Nd:YVO4 laser | 1064nm | 16.7MeV | 6000γ/s/mA/W |
532nm | 33.4MeV | 3000γ/s/mA/W | |
CO2 laser | 10520nm | 1.7MeV | 7000γ/s/mA/W |
*電子エネルギー974MeVの場合、波長106nmのNdレーザーを用いると、θ=0での最大光子エネルギーは、16.7MeVになります。この時、蓄積電子電流300mA、入射レーザーパワー10W を用いると、ガンマ線フラックスは、6000-γ/s/mA/W x 250-mA x 10-W = 1.8x10^7 γ/s となります。6mmφのコリメーター(厚さ100mmのPb)を挿入して、ガンマ線ビームの中央部を取り出すと、準単色のガンマ線ビームとして利用でき、フラックスは 5×10^6 γ/s 程度になります。上記以外の、異なる波長のレーザーも使えます。また、電子ビームのエネルギーを0.5GeVから1.5GeVの間で変更できるため、ガンマ線エネルギーは1桁程度のチューナブルです。
ご利用分野
レーザーコンプトン散乱ガンマ線利用

その他の共用機器
ビームライン設置共用利用機器
放射光観察用やレーザースペクトル確認用に、真空紫外分光器及び近赤外?可視光用分光器が使用できます。
ガンマ線検出器 HP-Ge(GMX-45) | |
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HP-Ge | 64 mmφ × 60 mm, Lq. N2 デュワー容量 30 L |
分解能 | 2.0 keV @ 1.33 MeV |
バイアス電圧 | 4.8 kV |
近赤外~可視光用: 0.5m分光器(ARC Model SP-5001) | |
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回折格子 | 1200, 600, 300, 150, 75 G/mm |
分解能 | 0.15 nm |
分光波長 | 200 nm - 12000 nm, (CCD, PbS, MCT detector) |
電子機器
デジタルフォスファーオシロスコープ、高圧電源、線形アンプ、ディスクリミネーター
レートメーター、カウンター、分周器、遅延パルサー、多重波高分析器、TVカメラ、モニタ
6"×12" NaI検出器、76×76×180mm GSO検出器, 50φ×90mm LYSO検出器